【声明】参議院議員選挙と東京都知事選挙を終えて

<2016年参議院議員選挙>
安倍政権が、集団的自衛権の行使と戦争できる国家に日本を導く安保法制(戦争法制)を強行採決し、壊憲の動きを強める中、今年2016年7月10日に行われた参議院議員選挙では、安保法制(戦争法制)の廃止と立憲主義の回復などを掲げ、民進党、日本共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの野党4党の選挙共闘が実現し、全国32の一人区で統一候補を立て、内11の選挙区で当選させた。野党共闘の大きな成果といえるだろう。そのこと自体はわれわれも大きく評価し、来るべき衆議院議員選挙でも、引き続き、野党共闘、そして市民も含めた共闘が発展・深化することを期待したい。

しかしこのような野党共闘の努力にもかかわらず、この選挙全体では、自民党、公明党の連立与党は、改選議席の過半数である61議席を大きく上回る70議席を獲得し、非改選議員を含めた参議院全体では、自民・公明の与党に加え、改憲に前向きな野党のおおさか維新の会・日本のこころを大切にする党、それに憲法改正に前向きな非改選の無所属議員を加えた「改憲勢力」が参議院における全議席の3分の2を超えた。同じく「改憲勢力」が全議席の3分の2を超えている衆議院とあわせて、議席の数で言えば、国会において憲法改定の発議をすることが可能になるという、危機的な状況を迎えてしまった。

なお東京は6人区で、1人区ではなかったため、野党統一候補は実現せず、「私が東京を変える」としても、改憲勢力、自公の補完勢力でない野党を応援するという合意はあったが、特定の候補者を応援することはなかった。

<2016年東京都知事選挙>
そういう中で舛添要一都知事(当時)が、猪瀬直樹前知事に引き続き、またもや「政治とカネ」の問題で、任期途中で辞任し、7月31日に東京都知事選挙が行われた。

わたしたち「私が東京を変える」としては、6月16日付の声明「都知事選にあたって」で、諸野党や広く市民あるいは市民運動諸グループで協議していただいて、われわれが都知事候補として最も相応しいと考える宇都宮健児氏を「野党統一候補」として推薦するよう呼びかけた。同時に宇都宮健児氏には、「野党統一候補」をめざして名乗りを上げられるよう出馬依頼状をサイトに公開し、その旨お知らせをした。

しかし野党4党の統一候補選びは迷走し、最終的に、鳥越俊太郎氏に決まった。その過程は拙速かつ密室的なものであった。そういう中で、宇都宮氏に、出馬するなという圧力も加えられた。

「私が東京を変える」は、7月13日付声明「宇都宮健児さん正式立候補のお願い」を出して、「正々堂々と選挙に出馬し、有権者の選択肢を奪わないことが肝要である」と主張した。

しかし宇都宮健児氏は、野党統一候補の勝利のため、また市民運動の分裂回避のため、苦渋の出馬断念という決断をされた。

「私が東京を変える」としては、宇都宮氏の立候補を願って、先の声明を出したが、鳥越氏での一本化が図られた以上、鳥越氏の当選を強く願うとともに、宇都宮氏の掲げた政策が一つでも多く、実現されることを強く望んで、【声明・要望書】「鳥越俊太郎知事誕生に向けて」を出した。鳥越氏で一本化するにあたり、宇都宮氏が特に強調した三点の政策(1.築地市場の豊洲移転作業をいったん中断し、再検討する。2.外環道・道路建設計画は見直す。3.横田基地へのオスプレイ配備に反対する。)などを、鳥越氏が自身の政策集に反映し、目に見える形で都民に約束することを前提として、鳥越氏への投票を呼びかけたのである。
その後、鳥越氏の女性問題に関わる「疑惑」が『週刊文春』『週刊新潮』で報じられた。鳥越氏が不利なのではないかとの憶測が飛ぶ中、選挙戦終盤を迎え、鳥越陣営から、宇都宮氏に対して、応援要請が正式に出された。それに対し、宇都宮氏は、提示した政策の受け入れと女性問題に関わる「疑惑」に対しての説明責任を果たすことなどを条件に、鳥越候補の応援に行くと回答したが、鳥越陣営は、政策の受け入れは表明したものの、「疑惑」に対しての説明責任を果たすことは拒否した。そのため、宇都宮氏の鳥越候補に対する応援は実現しなかった。

7月31日に投開票が行われた都知事選挙は、小池百合子氏が2,912,628票(得票率44.49%)で当選し、自民党、公明党、日本のこころを大切にする党推薦の増田寛也氏が1,793,453票(得票率27.40%)で次点となり、野党統一候補として擁立された鳥越俊太郎氏は、1,346,103票(得票率20.56%)しか得票できず、小池百合子氏にダブルスコアの票差をつけられ、増田寛也氏の得票にも及ばなかった。保守分裂と野党統一という極めて有利な状況がありながら、それを生かしきれず、惨敗というほかない。前回の都知事選挙で982,594票(得票率20.18%)を獲得して次点となった宇都宮健児氏が野党統一候補勝利のために、苦渋の出馬断念をしたにもかかわらず、前回の野党票が割れた中でも宇都宮氏が獲得した得票率20.18%と大差ない得票率しか鳥越氏は獲得できなかった。なお、得票数ではなく、得票率で考えるべきであることについて、前回、2014年2月の選挙日前日は大雪であり、投票率が特に低かったこと、そして、今回は18歳選挙権の実現により、有権者数自体も大幅に増えたことを付言しておく。

<野党統一都知事候補選定擁立過程の問題>
今回の野党統一候補鳥越俊太郎氏の選定・擁立には非常に問題があった。

①野党統一候補の擁立が自己目的化し、国政の課題が優先し、都政の課題が二の次にされたこと。
しかも鳥越氏は都政についてのきちんとした政策すら出馬会見や告示段階で何ら打ち出せなかった。
安倍政治、安保法制に反対し、立憲主義を守るということは重要であるが、都政の具体的な政策を示せないということでは、都民、有権者の支持は得られない。

②候補擁立に当たって政策協定もなく、擁立したこと。
これでは、野合と批判されても仕方ない。

③知名度優先で、候補者の都政に対する識見や適格性を十分審査することなく、擁立したこと。
人気投票ではないのだから、このような有名人、知名度のみを優先させる候補選定から脱却すべきである。また、宇都宮氏自身の知名度ということでいえば、過去2回の選挙で次点であったことからも、それなりに有権者の間で、宇都宮氏の名前は浸透していたと考えられ、宇都宮氏をあえて統一候補にしたくないという力が働いたと考える方が自然である。
④候補者の選定に当たって、公開の場で、候補予定者が都政に関する政策の相互討論や論争をすることなく、一部政党執行部の人たちによる密室での人選が行われたこと。
候補選定に当たって、予備選挙や候補予定者間の政策論争が公開の場で行われる米国の大統領選挙の方が、この点に関しては、よほど民主的である。特に候補者選定を中心的に進めた民進党執行部の責任は重い。著名人頼りで、何人もの候補者名が挙がっては消え、また別の人が挙げられるといった迷走を繰り返し、その結果、有権者の不信感も買った。
⑤候補擁立に当たって、候補者候補に対する、資質、適格性の審査が不十分であったこと。
鳥越氏の『週刊文春』『週刊新潮』が報じた「疑惑」が事実かどうか、わからないが、以前からそのような噂は一部で流れていたとも聞くので、民進党などの政党幹部も調査が充分だったかどうかも問われる。そして鳥越氏の高齢と体力の問題である。
⑥これまで2度に渡り、猪瀬氏、舛添氏を批判して都知事選を戦い、両回とも100万票近くの得票をして次点となり、前回は、野党側が分立したにもかかわらず、細川護熙候補の得票を上回る得票を獲得し、得票率も伸ばし、そしてその後も、市民とともに都議会を傍聴し続け、都政に対する政策を練り上げてきた、そして次の都知事選に向けた準備もしてきた宇都宮健児氏を候補者選定から排除する形で、出馬辞退を迫った、政党幹部や市民団体の人々の責任も問われなければならない。
「野党統一」という名目であれ、そもそも他の候補者の立候補する権利を奪ったり、圧力をかけたりする権利は誰にもないはずである。このような暴挙が行われたこと自体、有権者の不信を買い、結果として、鳥越氏への集票を拒んだと考えられる。これは、鳥越氏の問題ではなく、宇都宮氏という立候補表明者がいるのにもかかわらず、あえて、その立候補をさえぎる形で、他の候補を擁立しようとした野党の不誠実さこそが問われなければならない。

<今後の候補者選定擁立に当たっての提言>

①有名人や知名度に頼るのではなく、政策本位に候補者を選ぶべき。

②政党や市民団体が統一候補を擁立する場合は、きちんとした政策協定を結んだ上で擁立すべきである。

③候補選定に当たっては、一部の者による密室の場で行うのではなくて、公開の場で、相互の政策討論を行って、一般市民も参加して決めるべきである。

④候補者擁立に当たっては、候補者の識見、都政に対する熱意と政策、および政治とカネの問題、人間的資質の問題等を充分審査した上で擁立すべきである。

⑤宇都宮氏に対する今回のような不当な差別的対応は、いかなる候補に対しても繰り返されてはならない。

<今後に向けて>

宇都宮健児氏が取り組む市民活動の流れは、まさにわれわれ都民が求めるものを追求しており、この絶望的な時代にあって、わたしたちはそこに、一縷の光を感ずる。
自覚的主権者として、「私が東京を変える」は、その可能性に賭けることを決意した。
今回、小池百合子氏が都知事になったが、われわれは小池都政を監視してゆく。築地市場の豊洲移転問題や、外環道・道路建設計画問題、横田基地問題、オリンピック問題なども、注視してゆく。
来年は都議会議員選挙もある。
そして次の都知事選に備えて、われわれ市民運動の側でも、この間3回続いたような任期途中での突然の都知事選にも備えなければならない。
ひきつづき、都政の監視と刷新のため活動を続けている宇都宮健児氏と「希望のまち東京をつくる会」とも連携しながら、市民グループ「私が東京を変える」は、今後ともこれらの課題に取り組んでゆく。

私が東京を変える 代表 山口あずさ

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【声明】参議院議員選挙と東京都知事選挙を終えて」への1件のフィードバック

  1. 宇都宮さんが出馬し、統一候補に選ばれるべきでした。民主党が宇都宮さんを忌避したのは、前々回の選挙では「脱原発だから」、前回の選挙では「共産党が推しているから」でした。が、前回の選挙では脱原発の金看板の細川を推し、今回は共産党を含む野党共闘の枠組みなのですから民主党が宇都宮さんを忌避しなければならない理由はもうありません。
     民進党は参院選で一方的に共産党に道をあけてもらい応援してもらったのですから、都知事選では共産・社民に譲って宇都宮さんで行き、細川で割れた傷を癒しに行くべきでした。勝つことは難しいかもしれませんが次の選挙に繋がる戦いができたでしょう。
     一応は勝てる候補は鳥越であり古賀であり石田であって宇都宮ではないというのでしょうが、得票率で比べれば鳥越も細川も宇都宮さんもみな約20%で変わりません。
     また、鳥越老人の選挙戦術と振る舞いは惨敗した細川老人と同じで全く戦訓を生かしていません。
     宇都宮さんが戦訓を生かして2回目の選挙では戦術を変えて支持者を剥がされても得票率を伸ばしたのとは大違いです。
     民進党は自公と組んで都議会与党なのでハナからたとえ買っても少数与党で苦労したり既得権を失うより都知事選に敗けるつもりだったという見方がありますがそのようにしか見えません。
     さらに岡田が下りてさらに自民党野田派の右派の党首になり、都知事選の負けを利用して共産党を含む野党共闘の枠組みを変える方向のようです。前回は自民系の小泉ー細川による左派を分裂させる選挙でしたが、今回は民進(右派)による左派を分裂させる選挙でもあったのでしょう。小池劇場の一方で鳥越=民進劇場に踊らされ、反自民主流派はなぜか、降ろされた宇都宮さんや民進に協力してその党勢衰退を抑えた共産党を叩いている浅ましさです。
    伊丹万作は戦争責任者の問題でhttp://www.aozora.gr.jp/cards/000231/files/43873_23111.html
    >「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがいないのである。
    >現在の日本に必要なことは、まず国民全体がだまされたということの意味を本当に理解し、だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始めることである。
    と指摘していますが、騙されたこと自体に未だに気付けないでいるのを見ていると全く絶望的な気持ちになります。

     救いは室井佑月さんや森永卓郎さんhttps://www.youtube.com/watch?v=P4V8jmNZDUs(11:50頃より)や斉藤美奈子さんらが宇都宮さんで行くべきだ行くべきだったと強く言ってくれたことです。

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