小学館のビッグコミック・スピリッツ掲載の「美味しんぼ」について、「鼻血」に疑問を呈する形で環境大臣や双葉町長、福島県知事から異例ともいえるクレームが発せられ議論になりました。
風評被害が広がることを懸念して、マンガの表現に口出しをしたということだったのですが、「風評被害」という言葉が、あたかも戦前戦中に言論弾圧のために使われた「非国民」という言葉と同じような文脈で使われることに一抹の懸念を覚えます。
また、「美味しんぼ」は5月19日号で休載になりました。前からの予定との事ですが、こちらも後味の悪い休載となりました。
「私が東京を変える」では、昨年の4月6日に、対談「宇都宮健児・井戸川克隆 未来を語る」を主催しました。その後、この記録は、「私が東京を変える」のメンバーによってボランティアベースでテープ起こしがなされ、電子出版の形で公表されました。その中で、井戸川さんは、チェルノブイリ事故の4年後に甲状腺癌が発見されたことから、4年経過しない前の発見は原発事故との因果関連はないという議論を受けて、下記のように発言されています。
「私はもうあの、初期被ばくの時からこういう声になっちゃたんです。前はもっと、声ってのは一筋の声だったんですけど、今、プチプチとこう声が出るようになって、喉が痛いんですね。2日間以上、福島県内にいると喉がヒリヒリします。そしてもっと我慢すると喉の中で出血が起こります。これがまだ4年も経たないうちですね。この辺(口と鼻の周りを指さし)が私、年中具合が悪いんですね。これもやっぱりあの初期被ばくの影響だと、私は自分では思っているんですけども。これ、当事者が決めるべきですよ、それは。関係ない人が、4年経って「どうの、こうの」というものではないと思います。」
「美味しんぼ」騒動が起こる以前から、原発事故と健康被害を結びつけたくないという為政者の意図は、ずっと見え隠れしていたのです。
今回、「美味しんぼ」に実名で登場したことにより、井戸川さんに対して、個人攻撃のような批判がまかり通ることに対して、私たちは憤りを感じています。
第一、放射線による健康被害の訴えをタブーにするべきではないと考えます。風評被害の問題は、安全とされる数値を高く設定したことにより、公的機関が信頼を失っていることが主な原因と思われます。その数値でなければやっていけないというのが答えなのであれば、われわれは、風評にまどわされているから購入しないのではなく、まさに実害を恐れているから購入しないのです。
今回のような国務大臣及び自治体の首長による風評被害の名を借りた言論弾圧に対して、「私が東京を変える」は強く抗議します。
そして、井戸川克隆さんの真摯な活動に賛同するとともに、「美味しんぼ」の自由な表現活動とビッグスピリッツ誌面での連載が早い時期に再開されることを祈念します。
追記
今日は井戸川克隆さんのお誕生日です。
井戸川克隆さん、お誕生日おめでとうございます。
井戸川さんはまさに歴史の生き証人です。お体にくれぐれも気を付けて、これからもわたしたちの道しるべとして、ご活躍ください。
私が東京を変える
代表 山口あずさ