私が東京を変えるの役員である紅林進さんから、投稿頂きましたので、ご紹介します。
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猪瀬都知事の徳洲会グループからの5000万円借金問題による辞任に伴う、昨日2月9日(日)投開票の今回の都知事選は自民党、公明党、連合東京の支援を受けた元厚生労働相の舛添要一氏が2,112,979票を獲得して当選した。次点は、982,594票を獲得した日弁連前会長の宇都宮健児氏。同氏は日本共産党、社民党、新社会党、緑の党が支援した。宇都宮陣営には勝手連的に多くの市民も参加した。「即時原発ゼロ」を掲げて立候補した元首相の細川護煕氏は、956,063票で3位に留まった。政党では、民主党、生活の党、結の党が支援し、民主党は政党色を隠して、形容矛盾の「組織的勝手連」なる用語も使って支援した。石原慎太郎元都知事の支援を受けた元航空自衛隊航空幕僚長の田母神俊夫氏は610,865票を獲得して4位に食い込んだ。
宇都宮候補は、どの年代からもまんべんなく得票したが、細川候補は、小泉政権時代を知っている年配・高齢者からの得票は一定得ても、20代、30代では宇都宮候補を大きく下回った。(『朝日新聞」2月10日付朝刊・1面参照)
雇用不安、非正規化、ブラック企業問題など、若者が直面する問題を宇都宮候補が積極的に訴えた結果でもあろう。宇都宮陣営の選挙運動にも若者が多く参加した。
田母神候補は、高齢者の支持は少ないものの、20代で24%、30代で17%、40代で14%と若者の支持が高く、20代では、宇都宮、細川の両候補を上回っていることは、危惧すべき傾向である。雇用不安、非正規化という若者を覆っている閉塞状況がファッショ的な方向に誘導される危険性を孕んである。
ところで同じく「即時原発ゼロ」を主張する小泉純一郎元首相と二人三脚を組んだ細川護煕氏は、「脱原発」を争点に、かつての小泉郵政民営化の時のようなワンイッシュー選挙の再現を狙ったが、都民の関心は、必ずしも原発・エネルギー問題だけでなく、それは、景気・雇用や福祉などの問題よりも優先順位は低く見られた。その上、脱原発派の票は細川候補と宇都宮候補に二分されてしまった。
原発積極推進を掲げる田母神候補の票を別とすれば、宇都宮、細川の脱原発候補が一本化されれば、その相乗効果もあり、脱原発候補が当選した可能性もあり、脱原発候補が一本化されなかったことは残念ではあるが、その一本化を求めるあまり、先に立候補を表明していた宇都宮健児氏に対し一方的に立候補取りやめを迫り、細川護煕氏への一本化を迫ろうとした鎌田慧氏をはじめとする一部の市民運動家や「文化人」(おかしな用語だが)と呼ばれる人々は、著名性、当選可能性ということで、細川護煕氏への一本化を図ろうとしたが、それは宇都宮候補の票が細川候補の票が上回ったことを見ても、細川氏の方が宇都宮氏より当選可能性が高いという、その論拠は事実によって否定された。
私も脱原発派の候補が一本化されることはもちろん好ましいと考えるが、そのことは脱原発以外の都政の重要な課題を無視してよいということにはならない。しかし、細川氏と細川陣営は、脱原発以外の政策を告示日の前日まで示さず、宇都宮陣営による公開討論の呼びかけにも、応じないできた。そのために青年会議所が企画した公開討論会等、いくつもの討論会が宇都宮氏以外の参加表明がなく、中止に追い込まれた。政策論争を避け、都民の前にそれを示すことをしない姿勢は、舛添氏を含めて批判されるべきである。選挙は単なる人気投票ではなく、政策論争を前提とした有権者の判断が求められるのである。
候補を一本化する、統一するためには、オープンな形で政策協議を行って、政策の一致を得られならば、あるいは完全な一致は見られなくとも、一定の歩み寄りが見られるならば、きちんとした政策協定を結んだうえで、候補を統一すべきであり、一方が他方に降りろと一方的に迫ったり、水面下で圧力をかけるのでは、まとまる話もまとまらなくなり、たとえ形の上では、一本化したとしても、お互いしこりを残し、運動にとって決して良い結果は生まない。実際、このような一方的な圧力に、宇都宮氏と宇都宮陣営は反発した。
原発・エネルギー政策は、原発のない、電力一大消費地である東京にとっても、重要な課題であり、当然、主要な争点の一つではあるが、そのことは、他の課題を無視してよいということにはならない。原発立地自治体においては、他の問題は差し置いても、「脱原発」で一本化するということも当然あり得るが、東京の場合は、都民の生活に密着する他の重要な課題で、大きな相違があるのに、それを無視して、「脱原発」だけで一本化するということにはならない。
細川氏は、「原発以外の政策は誰が知事でもそんなに変わらない」と述べたが、とんでもない認識である。都民の生活にかかわる福祉や雇用、教育等の分野で、「誰が知事でもそんなに変わらない」とは、無責任であり、自らそれらへの積極的政策を持っていないことを証明するようなものである。そして細川氏は安倍政権が「企業がもっとも活動しやすい」地域を作ろうと、推進しようとしている「国家戦略特区」を活用すると語ったり、今日の格差社会を作った元凶である小泉元首相と二人三脚を組む中で、都政が小泉流の新自由主義的な方向に一層進むという危惧も大いに感じられた。都政をどのようなものにしようとしているか明らかにせず、政策論争すら避けるという状態で、一方的に「降りろ!」「一本化しろ!」と迫るのでは、それに乗れる状況でないのは誰の目にも明らかである。
本当に一本化させようと思うのであれば、きちんとした政策のすり合わせ等、双方が納得できる形で進めるべきであったと思う。
ところで舛添候補は、厚生労働相をやったことがあるというだけで、あたかも福祉に力を入れるのではないという誤解、あるいは意図的なイメージづくりが行われたと思われるが、それは多いな誤解で、舛添氏が厚労相時代にやったことといえば、老人への医療費負担増を強いる後期高齢者医療制度の導入、生活保護の母子加算廃止、介護保険料値上げ、年金改悪等々、福祉の切り捨てであり、宇都宮氏も「名誉村長」として支援にかかわった「年越し派遣村」に支援を求めてきた人々に対し、「大事な税金を働く能力があるのに怠けている連中に払う気はない」と発言した人物が舛添氏です。
また舛添氏は、国民の税金から支出される「政党助成金」で2億5000万円に上る借金を返済した疑惑((2014年2月6日発売の『週刊文春』)など、金銭疑惑や、女性や老人に対する蔑視発言も問題になっています。しかしマスコミは決してこれらを報じません。投票日までにこれらが広く報道されていれば、流れは変わっていたかもしれません。舛添氏が都知事に就任しても、これらの疑惑が問題になり、任期途中でやめるという猪瀬氏の二の前になる可能性もあります。そうなれば、巨額の都民の税金を使って、短期間での選挙という、異常な事態ですが、それらに備えて準備しておくことも必要かもしれません。
なお私自身は、今回の都知事選では、前回に引き続き、宇都宮候補支援の一市民ボランティアとして参加した。
ところで安倍政権は、舛添候補が勝利したのをよいことに、再稼働の強行や都知事選での原発問題争点化を避けるために、都知事選まで、延期されていた、原発を「重要なベース電源」と位置付ける「エネルギー基本計画」の閣議決定などを強行してくるであろう。
そのような中で、今回の都知事選を巡る脱原発派の、宇都宮陣営と細川陣営への分裂は、後に尾を引かせてはならない。そのような分裂を残してしまっては、原子力ムラの連中の思う壺である。違いは違いとしてお互いに認めつつも、再度、脱原発派の協力と連帯を取り戻すことも急務である。
紅林進